キミがいなくなるその日まで


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私はその後302号室を出た。考え事をしたい時に足が向かうのは決まってあの場所。

その途中で中村さんに会った。


『マイちゃん………』


中村さんの目もだいぶ腫れてる。もしかしたら隠れて大泣きしてたのかもしれない。

看護師は私情を出さない人がほとんどだけど、
同じように泣いてくれる方が私は安心する。


『………中村さんに聞きたい事があるんだけどいい?』


私には知っておかなければならない事がある。
きっと今聞かなかったら私は一生聞けないままだと思うから。


『…………………シンは最後どんな顔してた?
いっぱいいっぱい苦しそうにしてた?』


私は夢の中でしかシンの最後を知らない。

シンが死ぬ1秒前、シンが生きていた最後の時間を私は知っておきたい。じゃない後悔する。


『シン君は最後眠るようにして息を引き取ったわ。苦しい顔じゃない、とても穏やかな顔をしてた』


それだけ聞ければ十分。

叶うなら最後ぐらいは苦しい思いをして欲しくないなって思ってたから。

だからシンが穏やかに逝けたのなら私はもう何も言う事はないよ。


『マイちゃん、これ……』

涙を拭う私に中村さんがポケットから何かを出した。


『シン君の私物を整理してる時に枕の下から出てきたの。きっとマイちゃんに渡す為のものだろうと思って』


それはハートに折られた折り紙。

いつ折ったのか分からないけどシンがくれる最後の折り紙の形。


これがどんな意味なのか、もうシンに聞く事は出来ない。


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