キミがいなくなるその日まで
┗未来
────ギィィィ…………。
屋上のドアを開けると春の匂いがした。風に乗ってどこからか甘い花の香りもする。
この前まで吐く息は白くて、寒いねなんて言ってたのに。季節が移り変わるのは本当に早くて、
きっと時間も同じ。
私はシンと肩を並べていた場所へと移動した。
ここから見える景色は変わらないのに屋上に映る影は一つだけ。こうやって何を見ても私は切なくなってしまうんだと思う。
一人が好きだったはずなのにシンが一人にさせてくれなかったから、
誰かの温もりを知った私は随分泣き虫になった。
『……全部シンのせいだよ』
悲しくなるのも、切なくなるのも、苦しくなるのも全部シンのせい。
文句の一つぐらい言ってやりたいのに、これじゃただの独り言じゃない。
ねぇ、私はどうすればいい?
うつ向いて目を瞑った。
シンとの日々を一つ一つ思い出して、その中に答えがないか探してみる。
“ねぇ、心ってどこにあると思う?”
“心はマイ自身だよ。マイがマイで居る限りマイの心はどこにもいかない。俺はそう思うよ”
ドクン、ドクンと鼓動する私の心臓。
この心臓がなくなって新しい心臓になっても私は私のまま。シンが教えてくれた感情はきっとずっと残っていくだろう。
それでも私は自信がないよ。シンが居ない世界でどうやって生きていけばいいのか。
生きていく必要があるのか、すごく迷ってる。