キミがいなくなるその日まで
『なんか浮かない顔してるね』
会って数秒、シンが突然そんな事を言った。
『……別にいつもと一緒だよ』
なんて、平然と返したけど目線はシンの方を見なかった。
『そう?それなら良いけど』
そんな私に気付いてるくせにシンはそれ以上聞いてこない。
ずるいね。無理矢理聞いてくれたら絶対話さないのに……そんな風に優しくされたら打ち明けたくなるじゃん。
『………友達がさ、明日お見舞いに来るんだ』
友達に送ったメールの返事はすぐに返ってきて、心の準備も出来てないのに明日来る事になってしまった。
『そうなの?良かったね』
シンの純粋な言葉を聞いて私は顔を曇らせる。
『良くないよ。嬉しくないし、お見舞いなんて』
『どうして?』
どうしてって……そんな純粋な目で見ないでよ。
私の心はシンと違って真っ黒なんだから。
『だって“違う”って思い知らされるだけじゃない』
病院では私が患者で、友達は見舞い客。
その違いが私にとっては大きな違い。
だから来て欲しくない。
すぐに普通になるから、すぐにみんなと同じになるから、だから今は…………
『そうかな、来てくれる人が居るって事は嬉しい事だよ』
シンは『ね?』っと私を諭すように笑う。そんなシンはどこか寂しそうで気付くと私は手すりを握りしめていた。