キミがいなくなるその日まで
『可愛いね』
隣で恥ずかしげもなくシンがそう言った。
ここで本当に可愛い人なら“ありがとう”って言うのが普通なんだろうけど、
私はあいにく可愛い人ではない。
『なにそれ。それっていつもは可愛くないみたいじゃん』
なんで私はこんな皮肉しか言えないんだろ。
『可愛くないマイなんて居ないよ』
『!』
私は余計にシンの顔を見れなくなった。
シンは14歳で私は17歳。
それなりに免疫はあるけどシンの言葉はどこかくすぐったい。
『シン君、もうすぐ診察の時間よ』
通りかかった看護師さんがタイミングよく声をかけた。
『じゃぁね、マイ』
シンがソファーから腰を上げた時『あ…』と思わず声が出てしまった。『ん?』とシンが振り向いたけどその後の言葉が出てこない。
もっと話したいのに、それを何て言えばいいか分かんない。本当に私は素直じゃない。
すると全てを悟ったようにシンは言う。
『また屋上でね』
もしかしたらシンは超能力者なのかもしれない。
いつも私の気持ちを知ってて、
いつも私が欲しい言葉をくれる。
今度は私から言ってみようかな。
─────また屋上で。
そんな魔法の言葉を。