キミがいなくなるその日まで




私は気が抜けたようにベッドに倒れ込んだ。

まだ時間は早いしこれからみんなどこかへ遊びに行くんだと思う。羨ましいと思う反面、また現実に戻された気がして目を瞑った。

綺麗に化粧して可愛い服を着ても私はここから出られない。
たった1時間余りの事に気合いを入れた自分が情けなくて笑えてくる。


暫く経って病室のドアがノックされた。


────コンコン。


『………はい』

だるそうに返事をすると中村さんが顔を出した。


『マイちゃん、診察よ』

私は重い腰を上げ、風間先生が居る診察室に行った。

いつもみたいに椅子に座り風間先生が私の心拍を測る。


『顔色があんまり良くないけど体調は大丈夫?』


先生がカルテに色々書き込みながら私を気遣う。


『別に全然平気だけど』


私は平然と返事をした。

診察室には先生が書いているペンの音だけが響いている。


『……ねぇ』

その沈黙を破ったのは私。

『どうしたの?』と風間先生は私を見たけど私の視線はうつ向いたままだった。


『私の心臓……どう?』

少し小さな声で聞いてみた。普段こんな事聞かないから先生は心配そうな顔をしている。


『何か気になる事でもあるの?』

『………』


返答に困る。

だって気になってるのは私の心臓の事じゃない。


『……ただ聞いただけ』


私の心臓は何に耐えられて何に耐えられないのか。

病院内は歩けても外はまだ駄目とか、
お喋りはしていいけど騒いだら駄目とか、

それなら文化祭は駄目?

「文化祭に行きたいんだけど」そのたった一言がどうしても言えなかった。



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