キミがいなくなるその日まで




私達の間に風が吹き抜ける。

シンは私の反応を待っているのか何も言おうとしなかった。


『好きなんてそんな簡単に言ったらダメだよ』

風に乗った言葉はすぐ私から離れていく。


『どうして?』


だって、

だってシンは純粋じゃない。

そんな大切な言葉、私なんかに言ったら勿体ない。それに………


『私嫌いなの』


“好き”ほど無責任な言葉はないよ。


相手に想いを伝えたり、新たな関係が生まれたり、
誰でもその言葉を言う時は明日に向かって言うでしょ?

明日どうなってるか分からない私にはそんな言葉必要ないし、いらないよ。


『マイって優しいんだね』

予想外の返答に私は目を丸くした。


『は?』

どうしたらそういう言葉に繋がる訳?シンは毎回想像を越えてくる。


『マイは自分で気付いてないだけで、すごく優しい人だよ』

『全然意味分かんないし』


でもシンは嘘を付いたり適当な事を言わない人だって知ってる。

だからって自惚(うぬぼ)れる気なんてないけどシンがそうやって言ってくれるなら

せめて、シンの前だけでは優しい人でいたい。


そう、思わせるほど

あんたはすごい力を持ってるよ。



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