キミがいなくなるその日まで
『はぁ……』
私は深いため息をついてベッドから出た。
廊下に出て歩いていると、ふっと窓から飛行機雲が見えた。それは青い空に長く伸びる白い線。
なんとなく羨ましいと思ってしまった。だって私はとても窮屈(きゅうくつ)だから。
病院に居ると時間が本当に長くて、自分だけ時間が止まってるんじゃないかって思う程に。
売店で売っている雑誌はもうほとんど読み終えた。これからまだ続く入院生活。
私の17歳はこうやって終わっていくのかな。
そんな考えても仕方ない事を思った。
気が付くと私の足はいつもの場所に向かっていた。そう言えば昼間に屋上に来たのは初めてかもしれない。
広い屋上には沢山の物干し竿があって、入院患者が使ったシーツが干されている。
真っ白い布はゆらゆら風に揺れてほのかに洗剤の香りがした。
夕方と昼間では見える景色も全然違って、行き交う車や歩く人を見るとなんだか無性に虚しくなる。
『何してるの?』
私は振り向かなかった。
振り向かなくてもそれが誰だか分かるから。
『別に、何もしてないよ』
私は青い空を見ながら答え、シンはすぐに私の隣に来た。
『俺は今診察が終わった所。それでマイが屋上に行く姿が見えたから……』
私の耳にシンの言葉は入ってこなかった。ぼーっとしている私にシンが顔を覗かせる。
『また何か考えてる』
シンはクスリと笑う。
どうしてこんなに穏やかでいられるのか。卑屈になったり絶望したりしないのかな?
私の頭は常にそんな事ばっかりなのに。
『……シンはやりたい事とか、
してみたい事ってないの?』
あまり人の感情に深入りはしない主義だけど、
何故かそんな事を聞いてみたくなった。