キミがいなくなるその日まで




もしかしたら私以上に弟は病気について理解しているのかもしれない。

いつ退院出来るの?とか、早く元気になってとかカズキは絶対私に言わないから。


『生意気』

『………痛っ!』


私はゼリーを受けとると同時にカズキのおでこにデコピンをした。


『なにこれ、超温かくなってんじゃん。これならまずい病院のご飯の方がマシかも』


『なんだよ。せっかく持ってきてあげたのに』


『ははっ』


確かに糖分は良くないけど、取りすぎなければなんの問題もない。だからカズキが心配する必要はないよ。

でもなんか癒された。

まずいご飯も嫌いな野菜も今日は全部食べれそう。



『本当に一人で帰れるの?』


外が暗くなる前に私はカズキを連れて1階へ降りた。外はまだ明るいし人も沢山居るけどやっぱり心配だ。


『お母さんに電話する?そろそろ仕事終わる時間だし迎えにきてもら………』

『大丈夫だって。変な奴が居たらこれで撃退するから』


カズキはそう言ってサッカーボールを見せつける。

いやいや、世の中舐めすぎと突っ込みたくなったけどここは弟を信じて見送る事にした。


『………あ』


そんな声を出したのは私。だってシンが前方から歩いてくるのが見えたから。



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