キミがいなくなるその日まで
『あ、マイっ!』
シンはすぐに私に気づき駆け寄ってきた。隣に弟が居るからかな。なんか気恥ずかしい気分。
『マイが1階に居るなんて珍しいね。えっと……』
『弟のカズキ。今から帰るところ』
するとシンは腰をかがめて、カズキと目線を合わせる。
『はじめまして。宇佐美シンです。俺もここに入院してるんだよ』
なんだかシンが大人に見える。年下と接する所を初めて見たからかな。
『お姉ちゃんの彼氏?』
『ほら、馬鹿な事言ってないで行くよ』
私はカズキの手を引いて出入口で見送った。あのまま会話してたら余計な事言いそうで怖いし。
『マイ、お母さんみたい』
カズキが帰った後、からかうようにシンが言ってきた。
『だから弟だって』
私は足早に病室へと歩き、何故かシンはその後を付いてくる。なんで自分が早歩きなのか分からない。
『俺の事彼氏だって』
その一言で私はクルっと振り返った。
『あの年の子供はみんなそう言うの。真に受けないでよ』
とか言いつつ私自身が一番気にしてる。
シンが彼氏な訳ないじゃん。
どう見たらそんな風に思えるのって感じ。
『またなんか怒ってる。マイは短気なんだね』
そしてこの余裕な感じもむかつく。
『はいはい、じゃぁね』
私は逃げるように病室のドアを閉めた。
シンは同じ病気で同じ入院患者。そんな関係なのに家族と居る所で鉢合わせすると動揺する。
例えるなら異性といる所を親に見られたみたいなそんな感じ。
多分私の気のせいだと思うけど。