キミがいなくなるその日まで
┗居場所
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『はい、じゃぁ大きく息吸って』
今日もいつもの診察。風間先生は聴診器で私の心臓の音を聞いている。
ドクン、ドクンと体を波打つ脈。それが少し速いのはこれから先生にあるお願いをするからだ。
『はい、いいよ。昨日はご飯残さず食べたみたいだね。その調子で今後もたくさん食べてもらいたいな』
先生の他愛ない会話。私はギュッと洋服を握りしめて話を切り出した。
『あ、あのさ……私はちゃんと自分の体の事は分かるし無茶もしない。駄目って言われるのは分かってるんだけど……』
起承転結(きしょうてんけつ)がない遠回しな言い方。だって言うからには望みぐらい持ちたい。
『うん?どうしたの?』
先生が聞く体勢になったところで本題に入った。
『3時間だけ外出させて下さい』
多分、先生に敬語を使うのも頭を下げたのも初めてかもしれない。
『理由は?医師としてそこは聞いておかないと』
外出させてもらえそうな嘘を付くべきか。
いや、きっとすぐにバレる。先生は顔色を見るプロだから。
『高校の文化祭に行きたいの』
私が担当していた出し物も準備も出来なかったけど、やっぱり参加したい。
もしかしたら私にとって最後になるかもしれないから。