キミがいなくなるその日まで
お母さんはいつも仕事が終わってから病院に来る。時間通りならそろそろ病室のドアが開くはずだ。
───ガラッ。
『マイ、とりあえず3日分の着替え持ってきたから』
見慣れている光景なのに私はなんだか落ち着かない。でも言うタイミングを逃したらますます言いづらくなる。だから………
『お母さん、話があるからここ座ってくれる?』
そう言ってベッドの横にある小さい椅子を指さした。
『……話って?』
明らかにお母さんは戸惑っていた。だって私から話があるなんてただ事じゃないし。
お母さんは静かに椅子に座り私との距離はわずか数センチ。
『あのさ、明後日の文化祭3時間だけ行ってくるから』
あえて疑問形にしなかった。先生はお母さんの許可を取れって言ったけど私の気持ちはもう文化祭に向かってる。
『なに言ってるの、駄目に決まってるでしょ』
お母さんの顔が怖い。
『もう風間先生には許可取ってるし、ちゃんと約束事もしたから大丈夫だよ』
『なにが大丈夫なの?何かあったらどうするの?』
『何もないよ。雰囲気に合わせてはしゃいだり騒いだりしないし』
『そういう問題じゃない!!』
お母さんが久しぶりに声を上げた。でも私は動じない。これは想定内の事。
『マイの気持ちは分かる。外に行きたい事も文化祭に行きたい事も。でもお母さんは………』
『やめて。そうやって言い聞かせるみたいに言うのはやめてよ』
お母さんはいつも怒った後にマイの為だからってなだめるように説得する。
私はそれが大嫌い。
だったら言い合いをして喧嘩した方がマシ。