キミがいなくなるその日まで
『あらマイちゃん。今日は随分夕食残しちゃったのね』
夜の7時、中村さんが食べ終わった食器を片付けにきた。私は夕食を半分以上残してそれ以上箸が進む事はなかった。
『どこか具合でも悪い?風間先生に診てもらう?』
『平気、今日はお腹空いてないだけだから』
お母さんが帰ってからも私のモヤモヤは続いてる。文化祭を許してもらえなかった事もそうだけど理由は二つ。それは………
『マイ、遊びにきちゃった』
その声に慌ててベッドから起き上がると何故か私の病室にシンの姿が。
『ちょっとびっくりさせないでよ。お化けかと思ったじゃん』
考え事をしていたせいかドアが開く音も聞こえなかった。
『はは、お化け。居るかもね。ここ病院だし』
シンは私の許可なく部屋に入り、そのまま椅子に腰掛ける。
『ってか普通女子の部屋に入る時はノックでしょ。これ常識だから』
『えーだってマイも俺の部屋に来た時ノックしなかったよ?』
た……確かに。いや、あれはしなかったんじゃなくて忘れただけだし。シンの場合は確信犯でしょ。
私はため息をついてとりあえず気持ちを落ち着かせた。
『それで?私に何か用?』
夕食が終わって寝るまでのこの時間が実は一番自由だったりする。みんな各々くつろいだりしてるけど私は特になし。
病院の消灯時間は9時で眠気関係なしに電気は消される。見たいドラマは見れないし定期的に見回りにくるし規則は厳しい。
ってか、この時間にシンが部屋に来るなんて初めてなんですけど。
『今日渡すの忘れちゃったから。はい』
シンは緑色の折り紙を私に差し出す。
『なにこれ?』
『カメだよ。明日はウサギにするからね』
カメとウサギ?ウサギとカメ?童話ですか。