キミがいなくなるその日まで
なんかシンと話してると悩んでた事が馬鹿らしく思えてくる。それが逆に救われるけど。
『今日は弟さん病院に来なかったの?カズキ君だっけ?もっと話してみたかったのに』
『別に話しても面白くないでしょ』
でも考えてみれば私よりシンの方がカズキと歳が近いんだっけ。なんか不思議だ。
『俺は色々カズキ君に聞いてみたいな。だって俺が知らないマイをいっぱい知ってるから』
まぁ、弟だから知ってるけど絶対ろくな事言わないから私は反対。
『羨ましいなぁ、兄弟が居るって。俺は一人っ子だからマイみたいなお姉ちゃんが欲しかった』
シンが一人っ子だって初めて知った。
多分私はシンの事まだ全然知らない。勿論シンだって私の事を全然知らない。
『………私は逆に一人っ子の方が良かったな』
カズキがいらないとか兄弟が欲しくなかったとかそういう意味じゃない。
『カズキはね、私のせいで色々我慢してるから』
私が病気だから家族で旅行にも行った事ないし、
海にも遊園地すら行けていない。
今年の夏は友達の家族と一緒にバーベキューをしたらしいけど、きっとカズキは家族で行きたかったと思うんだ。
別に私抜きで行って来てもいいのに全然行かないし。みんな私のせいで色々我慢してるって分かってる。
『我慢してきたのはマイでしょ』
私の心の声が聞こえたみたいにシンが言う。
何故か涙が出そうになった。本当は誰かにそう言って欲しかった気がする。