キミがいなくなるその日まで
『多分、あんた綺麗な顔してるからイケメンになるかもね。身長も伸びて髪もちゃんと整えてさ。
そしたら女の子にモテモテかもよ?』
『はは、そうかな。そうだといいな。でもマイもモテるでしょ?患者さんみんなマイはスタイルがよくて可愛いって言ってるよ』
それって喜ぶべき?
だって入院患者って半数以上が高齢者なんだけど。
『まぁ、でも外見で得した事は何度もあるよ』
私は風になびく髪の毛を耳にかけた。
『だけど私に声をかける男って大抵ナンパか初対面。同級生とか私の病気の事を知ってる男には全然モテなかったよ』
『………』
『まぁ当たり前だけど。二人でいる時に何かあったら困るし。それに先に死んじゃう彼女なんて嫌でしょ』
別に傷ついたりしない。
これは仕方がない事だから。
『やっぱりマイは自分が死ぬって思ってるんだ』
そう言えば前にも同じ事を言われたっけ。シンは死に対してすごく敏感だ。
シンだけじゃなく病気を抱えてる人達全員。それなのに私は…………
『人間誰でも死ぬでしょ。それが私の場合明日なのか明後日なのかって違いだけ』
別に死に対して恐怖はないし、その時が来たら黙って受け入れる。それが生まれた時から決まっている運命なんだから。
『うーん、やっぱり訂正。マイはモテないね』
シンの顔はどこか呆れていた。
『なに急に。こんな性格だから引いたって訳?』
確かに私は可愛いげがないってよく言われる。長く愛されるのは決まって素直で笑顔がたえない女の子。
『うん、だから俺の彼女にしてあげてもいいよ。俺は将来モテるみたいだから』
シンの言葉に私は固まってしまった。
『………は?な、なに言ってんの。馬鹿じゃない?』
『だってマイの事を理解出来るのは同じ病気の俺しか居ないから』
私はギュッと手すりに力を入れた。
いつもならこんな事、真に受けたりしない。鼻で笑って冗談だって聞き流す。でも…………
『…………考えておくよ』
何故かそう答えてしまった。