キミがいなくなるその日まで




突然聞かされたシンの病名に動揺が隠せない。
心臓病の本を読んだ時、拡張型心筋症の症状も書いてあった。

あの時なんて書いてあったんだっけ?思い出せない。


『マイはいつも強気で病院に来るんだけど帰る時は少し落ち込んでる。その後ろ姿を何回見たっけ』


シンは何故か嬉しそうに私の事を話す。私は動揺をシンに見せないように気丈に振る舞った。


『そんなの気のせいだよ。落ち込んで帰った事なんて一度もないし』


『えー。でも俺知ってるよ?』


『………?』


シンは不適な笑みをこぼしている。


『一回ね、診察の時間間違えた時にマイと風間先生の会話が聞こえちゃったんだ。あれはマイが中学生の時かな』


私が中学の時?何か変な事話してたっけ。診察中はいつもテンション低いからあまり喋らないと思うけど。


『そう言えばこの前話してた彼氏とはどう?って先生の声が聞こえて。そしたらマイは別れたって』

『………』

『理由を聞いたら病気の事を話したら態度がよそよそしくなったって。それで問い詰めたら……』


『病気の美人より健康なブスがいいって言われた、でしょ?』


思い出した。そんな事もあったっけ。まさかシンにあの会話を聞かれてたなんて。


『そうそう。それでマイは相手の顔面にパンチして別れてきたって言ってた。でもそう言って診察室から出てきたマイの目には涙が溜まってて』

『………』


『マイは強いのか弱いのかどっちなんだろう?ってずっと気になってた』



あの時の私は純粋で今思えばガラスみたいに繊細だった。

先生には顔面にパンチをして自分から振ったみたいな言い方をしたけど、本当はなにも言い返せずフラれたんだよ。


そもそも私は人に執着しない性格だから。

去る者は追わず、平気な顔をして誰も見ていない場所で声を殺して泣くの。


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