キミがいなくなるその日まで




『俺はマイの質問に答えたよ。だから次はマイの番』


銀色の手すりにシンの顔が映ってる。シンの好きな電車がビルの隙間を通ったのに珍しく見向きもしなかった。


『なにが聞きたいの?私は別に隠し事なんてしないし』

『でもマイは俺に話したい事があったんじゃないの?』


どうしてシンには何もかもお見通しなんだろう。

確かに私はシンに言いたい事があった。でも口にするのが怖い。だってシンは、シンは……………


『マイ、大丈夫だから何でも話して』


私の心の奥の方。誰にも言えなかったけどずっとずっと思っていた事。それは………



『私ね、心臓移植本当はしたくないの』


心臓に疾患を抱えてる人の最後の砦(とりで)。
勿論、望んだからといって全ての人が移植出来る訳じゃない。


“じゃぁ…さ、もし私にドナーが見つかったとして、手術したくないって言ったらどうなるの?”

“その場合、手術は行わないよ。親や周りがどんなに望んでも本人が拒否すれば手術は出来ない”


あの時、私は何故かほっとしたんだ。今まで私は自由ではなかったけどそれだけは自分で選択出来るんだって。

すごくすごく安心した。



『どうして?どうしてマイは心臓移植したくないの?』


私はシンの顔を見る事が出来なかった。

だってシンは望んでいるでしょ?それをしたくないっていう私を変に思うのは当然だよね。

でももう隠す事はやめよう。

シンだけには本音で話すよ。本当はずっと誰かに聞いて欲しいと思ってた。


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