キミがいなくなるその日まで




『脳死って見た目眠ってるみたいじゃない?体温もあるし呼吸もしてる。生きてるって言う人の方が実際に多いんだよ』


臓器提供者の人は医師に脳死と判断された人達。
文字通り体は生きているけど脳が機能してないという事。


『仕方ないよね、私だって親族だったら絶対臓器をあげたりしない。特に心臓はね』


だって心臓は取り出される瞬間まで鼓動し続けているんだから。

私だって死にたい訳じゃない。

でも誰かの死を望んでる訳でもないの。


『誰かの心臓を貰うってその人に代わって自分が生かされるって事でしょ?……私はそんな人間なのかなって』

『………』


『誰かの代わりに生きていい人間なのかなって思うんだよね』



私は優しくないし誰かに貢献出来る訳でもない。

だったら私は生まれもったこの心臓で生きて、そして死ぬ。その方が私らしいかなって思ったりする。


『あ、でもこれは私の考えだから。別にドナー待ちの人を悪く言ってる訳じゃないからね』

シンがあまりにも黙って私の話を聞いてくれたから少し不安になった。


『うん、分かってる』


シンの表情はいつも通りだった。でもその内側は分からない。


『………どう思った?正直に言って』


だから私は聞く。なんでも分かってしまうシンとは違うから。


『マイが言った通りこれはマイの考えだから。
俺はそれでいいと思うよ』


『………うん』


『でもなんで俺達がこんな難しい事考えなきゃいけないんだろうね。…………そう思わない?』


シンの横顔がどこか寂しそうで、私は何も言えなくなった。


思うよ、私だって。

10代で生きるとか死ぬとか命とか、時と共に学ぶ事が私達には出来ない。

でもそんな難しい問題をシンだって生まれた時から抱えていたでしょ。だけど決してシンが強くない事を私は知ってる。


傷つかない、苦しまない、悲しまないなんて、
そんな鋼みたいな人間はいないから。



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