キミがいなくなるその日まで




中村さんが居なくなった後、私は私物が入ってる袋を漁った。中には化粧道具だったりネイルだったり小物がごちゃごちゃと入っている。


『………あった』

探していたのは一冊の本。読書はしないけどこの本だけは何度も読み返した跡がついていた。


『確かこの辺に………』


私はページをめくりながらある言葉を探す。それは………


『これだ、拡張型心筋症』

私が手に取ったのは心臓病の本。自分の病気を知る為にずっと昔に買ったものだった。


そこには不整脈、心臓発作といった私と同じ症状が書かれていた。だけどある文字を見て私は止まる。


【診断されてからの5年生存率は54%、10年生存率は36%とされている。尚、治す為に現段階では心臓移植しか方法はない】


───ドクン、ドクン。

ちょっと待ってよ。シンは今14歳だよ。

10年で36%って事は今のシンはそれよりも低い確率で生きてるって事?


“私ね、心臓移植したくないの”

馬鹿だ私は。シンの事何も知らずにそんな事を言ってしまった。

私はコツンっと自分の頭を叩き、取り返しのつかない後悔をしていた。


居てもたってもいられなくなった私は慌ててベッドの布団を剥ぎ取る。部屋を出る寸前、とてもいい香りがしてとっさに数本の花を握りしめていた。


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