キミがいなくなるその日まで
私はシンの質問に返答せず暫く沈黙が続いた。
シンはそんな私を見て立ち去るどころかゆっくりと近付いてきた。
頬をすり抜ける風のように隣に移動して来たシンは、手すりに手をかけ夕日を見つめている。
『綺麗だよね夕日って。ここから電車が見えるんだよ。知ってた?』
『………』
シンは容姿もしゃべり方も幼くて対応に困る。
でもこうして無視していれば嫌でも立ち去って行くと思った。
『ねぇ、この夕日いつまで見れるかな?』
そんな声が耳に届き、私はようやくシンの方を見た。
………すると、シンと私の距離はすごく近くて肩がぶつかってしまう程だった。
『見れるといいよね。明日も』
何故かシンはニコリと私に微笑む。
なんだろう、すごく不思議な気分。
本当だったらこの距離も馴れ馴れしい口調も不快なはずなのに、どうしてかその感情が湧かない。
人と関わる事を避けていたけど久しぶりに誰かの体温に触れたような、そんな感じがした。
『あんた変わってるね。私と仲良くしたっていい事ないよ』
皮肉混じりに返答するとシンは予想外の事を言ってきた。
『ずっと話してみたかったんだ、マイさんと』
話してみたかった?私と?
そんな事を言われると思ってなかったから照れ隠しにいつもの調子で返す。
『なにそれ?ナンパしてんの?』
『はは、そうかもね。うん、そうかも』
また笑みをこぼしたシンの顔に夕日が当たってそれはオレンジ色になっていた。
『マイでいいよ。面倒くさいし、そうゆうの。
ここじゃ年上も年下も関係ないでしょ』
これが初めてのシンとの出逢いだった。