Neverland
「だって雄速いんだもん。」
「陸上部なめんなよ。毎朝遅刻しないですんでんのも俺のおかげだろ?」
「遅刻くらい大丈夫だし。」
ついムキになってしまった。
「お前、高校とか考えてんのかよ。」
「なにも。」
「答えになってねーし。もっとお前、ちゃんとしろよな。」
「わかってるよ。」
雄になんか言われたくない。
そう言おうとしたけど飲み込んだ。
雄はなんだかんだちゃんとしている。中学にはいってから陸上を初めて、成績もそこそこ。勉強だってトップとはいえなくてもできないほうではない。
きっと今年の陸上部の部長は雄だと聞いた時がある。
少なくとも私よりはちゃんとしている。
しかし、わかっているからこそ腹が立つ。
「彩花ー?起きたー?」
雄と喧嘩っぽくなるまえに話しかけてくれたのは佳奈。
雄はちらっと佳奈に視線を向けて、じゃあなと席へ戻っていった。
「ごめん、タイミング悪かったね?西川くんなんの用事だったの?」
雄と入れ替えに佳奈が座った。
「あぁ大丈夫。ただノート貸りに来ただけだってさ。」
「そっか。でも彩花寝てたでしょ?はい、ノート持ってきたよ。」
ぱさっとノートが目の前に置かれた。
「さすが佳奈。」
まだ授業開始五分前、さっさと写し始めた。
「ねぇ、西川くん、他に用事あったんじゃないかな?」
「んー?何で?」
つぎつぎに垂れてくる髪の毛が邪魔で無意識に髪を耳に掛けた。
「だって彩花が寝てたなんてクラスで知らない人いなでしょ。先生何回も注意したし、ノートとってないことくらいわかるよ。彩花イビキかいてたしさぁー。」
「え、うそ。」
ぱっと佳奈と目を合わせた。どうせ佳奈の冗談だろう。
目を白黒させながら佳奈の瞳を読んだ。
嘘?まさか本当?
「嘘なら笑えたけどね。」
一瞬で顔が赤くなるのがわかった。
体温も上がり、熱くなる。
「恥ずかしー。」
「ふふ、嘘だよっ。」