Neverland

「だって雄速いんだもん。」

「陸上部なめんなよ。毎朝遅刻しないですんでんのも俺のおかげだろ?」
「遅刻くらい大丈夫だし。」

ついムキになってしまった。

「お前、高校とか考えてんのかよ。」

「なにも。」

「答えになってねーし。もっとお前、ちゃんとしろよな。」

「わかってるよ。」

雄になんか言われたくない。

そう言おうとしたけど飲み込んだ。

雄はなんだかんだちゃんとしている。中学にはいってから陸上を初めて、成績もそこそこ。勉強だってトップとはいえなくてもできないほうではない。

きっと今年の陸上部の部長は雄だと聞いた時がある。

少なくとも私よりはちゃんとしている。

しかし、わかっているからこそ腹が立つ。


「彩花ー?起きたー?」

雄と喧嘩っぽくなるまえに話しかけてくれたのは佳奈。

雄はちらっと佳奈に視線を向けて、じゃあなと席へ戻っていった。

「ごめん、タイミング悪かったね?西川くんなんの用事だったの?」

雄と入れ替えに佳奈が座った。


「あぁ大丈夫。ただノート貸りに来ただけだってさ。」

「そっか。でも彩花寝てたでしょ?はい、ノート持ってきたよ。」

ぱさっとノートが目の前に置かれた。

「さすが佳奈。」

まだ授業開始五分前、さっさと写し始めた。

「ねぇ、西川くん、他に用事あったんじゃないかな?」

「んー?何で?」

つぎつぎに垂れてくる髪の毛が邪魔で無意識に髪を耳に掛けた。

「だって彩花が寝てたなんてクラスで知らない人いなでしょ。先生何回も注意したし、ノートとってないことくらいわかるよ。彩花イビキかいてたしさぁー。」

「え、うそ。」

ぱっと佳奈と目を合わせた。どうせ佳奈の冗談だろう。

目を白黒させながら佳奈の瞳を読んだ。

嘘?まさか本当?

「嘘なら笑えたけどね。」

一瞬で顔が赤くなるのがわかった。
体温も上がり、熱くなる。

「恥ずかしー。」

「ふふ、嘘だよっ。」



< 20 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop