Neverland
自転車は駅へ進んだ。
「お前さ、いい加減チャリで来たらいいじゃん。」
「自転車の出し入れめんどくさいんだもん。マンションから駅近いし。」
だるそうに足をぷらぷらさせた。
「めんどくさいばっかり言ってるとうちのオカンみたいになるぞ。」
「雄のお母さん好きだからいいもーん。」
「あんなババァの何がいいんだか。」
冷たい風が邪魔するけど、背中に頭をこつんと置いて目を休めた。
ほのかに香水の香りがした。
いつからつけるようになったんだろうな。
香水があまり好きじゃない私は顔を横にそむけた。
「ほら、着いたぞ。」
自転車は駅の小さい自転車置き場のジャリの前で止まった。
「ん、ありがと。」
彩香は自転車からおりて、さっさとホームへ向かった。