崩壊家族
服部くんは、私が初めて恋をした男の子だ。

「さゆり、服部くんに片思いしてたもんね」

静子が言った。

服部くんとの恋は、高校時代の淡い思い出だ。


彼とクラスメイトになったのは、高校2年生の時だった。

でも、それ以前に私は彼のことを知っていた。

頭がよくて、成績は学年で10位以内には必ず服部くんの名前が入っていた。

背が高くて、顔立ちも俳優かと思うくらいにかっこよくて、おまけに誰に対しても優しい。

学校のアイドル的存在だった彼の周りには、いつも人がいた。

当然、彼に片思いをする女子たちもたくさんいた。

私も、服部くんに片思いをするその1人だった。

私が図書委員を務めていた図書室の窓から、グラウンドがよく見えた。

放課後は、いつも野球部の練習風景を見つめていた。

特に、服部くんを。
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