崩壊家族
先輩にはかわいがられて、後輩には慕われる。

そのうえ顧問からも、一目置かれている存在だ。

服部くんを遠くから見つめているだけだったけれど、それでも私は幸せだった。

彼が、いつか私を見てくれると願っていた。

彼と恋人同士になることを、いつも夢見ていた。


そんな彼に告白しようと決意したのが、その年のバレンタインデー。

私は放課後、勇気を出して図書室に彼を呼び出した。

「松嶋、話ってなんだ?」

いつも遠くにいた服部くんが、今目の前にいる。

それだけで、もうドキドキと私の心臓が鳴っていた。

前の晩に徹夜で作ったチョコレートを、彼の前に差し出した。

「――これを、受け取ってください…」

服部くんに、言ってしまった。
< 13 / 105 >

この作品をシェア

pagetop