崩壊家族
その日、手を繋いで一緒に帰ったことを、私はまるで昨日のように覚えていた。

でもお互い恥ずかしくて、どうしてもみんなの前では一緒にいることはできなかった。

つきあっていると言うことはつきあっているけど、でもそれをみんなの前で公表するのは恥ずかしかった。

ましてや、クラスの人気者で野球部のキャプテンの服部くんだ。

私と彼がつきあっていることを知っていたのは、たぶん勘のいい静子くらいだったかも知れない。

結局最後まで一言も話をしないまま、私たちは別々の道を歩んだ。


「服部くんさ、会社を立ちあげたんだって」

静子の声で、ハッと私は我に返った。

「えっ、そうなの?」

初耳の事実に聞き返した私に、
「あれ、知らないの?

大学卒業と同時にインテリア系の会社を立ちあげてさ、大成功。

今じゃ超有名人だよ、服部くん。

実業家としてマスコミにもひっぱりだこ」

「へえ…」
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