崩壊家族

2-2.私に娘はいません

翌朝。

「じゃ、行ってくる」

「行ってらっしゃい」

玄関で会社に行く洋介を見送るのが、私の毎朝の習慣になった。

「夕飯は夜景のキレイな中華料理店を予約してるから」

「わあ、楽しみ!」

「仕事終わったら迎えに行くから」

「待ってるわ」

チュッと、洋介と軽いキスを交わした。

「じゃ、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

パタンと閉じたドアは、洋介が出て行った証拠だ。

でも、寂しくない。

むしろ、ドアの音も楽しいと思ってる。

「奥様」

そう言って私の前に現れたのは、カネさんだった。
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