崩壊家族
「美味しい!」

あまりの美味しさに、私はつい笑ってしまった。

でもあんまり食べ過ぎるのはよくない。

夕方は洋介と一緒に食事に行くんだから…なんて思う私だけど、手はクッキーの方に伸びてしまう。

勤めていたパートは、洋介と暮らし始めた翌日に辞めた。

今の私は、充分と言っていいほど時間に余裕がある。

あの生活では考えられなかった今の生活をくれたのは、もちろん洋介だ。

「奥様」

カネさんがリビングに入ってきた。

「どうかしたんですか?」

紅茶が入ったカップを置いて聞いた私に、
「お電話です」

そう言ってカネさんは携帯電話を私の前に差し出した。
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