崩壊家族
「だから、お願いだ」

そんなことを突然言ったかと思ったら、夫が私の目の前で土下座をした。

「俺と、もう1度やり直してくれ!

俺にはさゆりしかいないってことがわかったんだ!

だから…だから…」

夫を見下ろすと、彼の躰が震えていた。

やり直してくれ?

俺にはさゆりしかいない?

どれもこれも、今さら過ぎて笑える。

バカみたいって思った。

「――遅いのよ…」

そう言った私に、夫がおそるおそる顔をあげた。
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