MIND TERRITORY
「いやいや、そんな大袈裟なもんじゃない。しかしな…最近気になる事があってね」

「と、言いますと?」

山西は身を乗り出すようにして、西条に耳を傾けた。

「どうした事か、近頃不意に記憶が飛んでしまう時があるのだ。物忘れなんてレベルじゃない。下手をすると、直前まで何をしてたのかさえ、分からない時もあるのだよ」

西条は一つ息を継いで、更に続けた。

「もう引退する頃合いかも知れんな。幸いにもこの研究所には、君のような優秀な人材もいる。私が居なくても、きっと近い内に研究は成果を上げるだろう」

西条は冗談混じりに、微笑みを浮かべて話していたが、その話を聞いていた山西の顔色は、みるみる内に蒼白へと変化していった。

「どうかしたのかね?」

西条は訝しげな表情を浮かべて尋ねた。

「いえ、なんでもありません。ただ…一度詳しく診てもらっては如何ですか?」

西条は不安げな表情に変わった。

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