MIND TERRITORY
「なんだ?妙に深刻そうな物言いをするじゃないか。それは医学的な見地から不安な要素があると言う事なのかね?」

山西は少し困惑の表情を浮かべた。

「まぁそうですね。教授も脳に於いては専門家じゃないですか。記憶が飛ぶと言った症状について、楽観視できると思いますか?」

西条は小さく唸った。

「確かに君の言う通りだ。もし歳の所為であったりと致命的な問題でないのなら、それに越した事はない。…分かった。一度検査を受けてみよう。悪いが手配をお願いできるかね」

「はい。なるべく近い内に検査を受けられるようにしておきます」

山西はそれだけ言い残すと、部屋を後にした。

西条は年寄り扱いされるのを最も嫌い、噂に名高い頑固者として通っている。
いくら山西に強く推されたからと言って、普段ならこんなにも殊勝に助言に耳を傾けたりしない。
よほど深刻な症状を自覚しているのであろう。

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