大好きな君へ言いたいこと。
【蒼空side】

「ただいまぁ♪」

家に入ったとたん琉衣が元気に中に走っていく。

「お帰り。」

琉衣が奥の部屋に入るのとほぼ同時に奏兄が階段から顔を出した。

「ただいまッ♪」

蒼空は笑ってそう言った。
けど、正直もう足が限界だった。
多分、長い間立ってたから…。

蒼空は靴を脱ぐと琉衣が入っていった部屋の方へと向かう。

「蒼空。ちょっと来て。」

奏兄が呼んだ。

「ん?」

奏兄はトントンと、自分の横を叩いた。

「こっちにこい。」ということだろう。

「奏兄どうかした?」

奏兄の横に座った。

「蒼空。足出してみ。」

蒼空は少し驚いた顔をした。

「なんでそれ…」
「いいから足出して。」

蒼空はしぶしぶ怪我した方の足を出した。

「やっぱり…か。」
「へ?」

蒼空が気の抜けたことを言う。

「この湿布とってもいい?また貼ってやるから。」

そう言って奏兄は湿布の貼ってあるところをトンッと突っついた。

ズキッ

すごく痛んだ。

「う…ん。いいよ。」

蒼空がそう言うと奏兄は湿布をゆっくりゆっくりとはがした。

「やっぱり。」

奏兄は何かを確信したように言った。

「え?」

蒼空はなんのことか理解出来ず、ただただ、奏兄の方をみた。

「だめだろ。こんな足でずっと立ってたら。」

そっか。
奏兄はなんでもわかってるんだ。

「今、捻ったときより痛いだろ?」
「うん…。」

蒼空がそう言うと奏兄はさっきみたいに頭を撫でてきた。

「痛かったならすぐに言えばよかっただろ?」

うん…。
それは、奏兄の言う通りだ。
ただ…
みんなに心配をかけたくなかった。

「蒼空の気持ちもわかる。でも、だったら尚更、言ってやらなきゃダメだからな。」

奏兄はポンポンッと頭を叩いた。

なんだか、涙が出そうだった。
いつも人に無関心な奏兄が、こんなにも自分を見ててくれていたなんて。

泣いちゃいけない。

蒼空は、唇を少し噛んだ。

「大丈夫だって。無理すんなよ。」

そう言って、奏兄は優しく抱きしめた。

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