キレイをつくる保健室

ヒロが、白いハンカチで口をしっかり覆って、あたしの肩を抱く。

「生徒が……中にいるかもしれない」

あたしの言葉にヒロが、首を振る。


「だめだ、扉を開けたら、酸素が一気に入って爆発するかも」

ヒロはあたしの肩を抱いたまま、低い姿勢で廊下を走る。

非常ベルのつんざくようなキンキンした音のなか。


あたしたちは走る。


外に出る通路まで来て、ヒロはあたしの肩を抱く手をゆるめた。

「外から消火に当たろう」

そのまま、ヒロはほかの男性教師とともに、消火に向かう。


「ヒロ……」

やっぱり、男性だね。

消火器を持ってきた教師たちと合流して、外から化学実験室へと走っていく。

「消防車は?」

「もう来るはず」


ウウウ…ウウウ…消防車のサイレンが鳴っているなか、

あたしはナミや下川くん、そして塚田の姿を探した。

外庭に生徒は避難して、みな、ざわめいて落ち着きがない。


ナミ。下川くん。

塚田。

どこにいるの!?

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