キレイをつくる保健室
ヒロが、あたしの前で芝居がかったポーズで頭を下げた。
その瞳は夕暮れの暗くなるなか、薄く日の光を反射して青くキレイ。
透き通るヒロの目は文句なしで美しい。
あたしはサファイアのような瞳に吸い込まれそうになる。素直に魅力的だと認めてる。
「…その瞳で見つめないで」
「やだ。許してくれるまでナミのことを見てるよ」
整ったハーフ特有の高い鼻。眉間にしわ寄せする姿さえ悩ましい。
けれど今のあたしには、心の奥に響いて来ないの。
ヒロ、あなたは、ひとりであたしを置いて去った。
あたしの中に、風穴を開けてしまったんだよ?
口から幾ら美しく優しい甘美な言葉が出ようとも、行動は偽れない。
ヒロにとって、あたしがトイレの漬物になることは、ただの恐怖でしかなかったんだね。
「ヒロは自分のために逃げたでしょ。それが正直なヒロの気持ちだよ」
好きなら逃げない。
ひとりの女性の王子様になる覚悟はヒロにはまだ、ないんだ。