龍とわたしと裏庭で④【クリスマス編】

「あれ? もう見終わったの?」


部屋に戻って来た圭吾さんが言った。

圭吾さんは、わたしが番組を録画してたのも、今日見ようと思っていたのも分かってる――当たり前よね。全部わたしがペラペラと話すんだもの。


「今日は見るのやめたの。気分じゃなかったから」


「ふうん」

圭吾さんはソファーにうつぶせで寝転んでいるわたしの上に屈み込むと、頬にキスした。

「その雑誌、面白い?」


「面白いわよ」


「経済誌に興味があるとは知らなかったな。それ、上下逆さまだよ」


わたしは両手を上げて、バタッとソファーの上に倒れ伏した。

待っていないフリしてたのに。


「待ちくたびれた」


ソファーに顔を伏せたまま、拗ねたように言うと、圭吾さんは優しくわたしの頭を撫でた。


「着替えてくるから、もう少し待っていて」


わたしはソファーの上に起き上がり、膝を抱えた。


「ねぇ、圭吾さん?」


呼び掛けてみたけど返事がない。


わたしは圭吾さんの後を追った。

< 11 / 120 >

この作品をシェア

pagetop