龍とわたしと裏庭で④【クリスマス編】
慌てたように出て来た美月のお母さんにも、丁寧なご挨拶をされて恐縮した。

羽竜本家にいるというのはこういう事。

分かってはいるけど、まだ学生のわたしにはちょっと荷が重い。


「あの……今日は美月さんの龍を見に来ただけなので、お気遣いなく。それにお客様なのでは?」


お母さんと入れ代わりに優月さんが戻ったようだったけど。


「ええ、主人の知り合いの方がいらしてまして」


「誰?」

美月が声をひそめて聞いた。


「常盤道隆さんですよ」


あれ? それってこの間、圭吾さんのところに来た人じゃない?


「わたしあの人苦手! 先輩、龍見に行きましょ、龍を!」


そうね、その方がいいかも


「ひどいな、美月ちゃん。僕に会わない気?」


気取ったような口調の声がした。

う……わたしも苦手なタイプかも


「あー、いらっしゃい」

美月が口早に言う。

「見ての通り、わたしはわたしで忙しいんで失礼します」


美月、こういう時はあんたの潔いほどの無礼さが気持ちいいわ

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