龍とわたしと裏庭で④【クリスマス編】
わたしは慌てて携帯電話を取り出した。


もうこんな時間!

着信はないみたいだけど


「ああ先輩、この温室は電波状況悪いんでケータイは使えませんよ」


それ何? 嘘って言って

うわぁん 嫌な予感がする


「美月? 志鶴さん?」

細く開いた鉄のドアの間から声がする。

優月さんだ。


「お姉ちゃん? 待って、今行くから」

美月は急いでケージの蓋を閉めた。


わたし達が温室から出て行くと、優月さんはホッとしたような笑顔を見せた。


「ごめんなさいね。離れている龍には、いまだに慣れなくて。圭吾……圭吾さんから電話があったわ。こちらに迎えに来るそうよ」


ああ、やっぱり


「圭吾さん、怒ってました?」

わたしは恐る恐るきいた。


「いいえ。でも何だか慌てていたみたい」


怒ってるより悪いかも

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