龍とわたしと裏庭で④【クリスマス編】

家に帰ると、従姉の彩名さんが『見つけられたのね』って圭吾さんに言った。


「ただ単純に、携帯電話が繋がらない場所にいたらしいよ」

圭吾さんは後ろからわたしの頭のてっぺんにキスをした。

「着替えておいで。夕食にしよう」


夕食の時に、彩名さんが3月に東京で個展を開く事になったと言った。

「しばらくアトリエにこもりっきりで、2月になったら出かけてばかりね」


「出かけついでにお婿さんでも探してらっしゃい」


伯母さまが言うと、彩名さんはふふっと笑った。


「道端に、お婿さん候補が落ちていたらね」


ふと見ると、圭吾さんがわたしの小皿に醤油をたらし、ワサビまで入れていた。

何だか急におかしくなって、わたしは口に手をあてて圭吾さんを見た。


「ん? どうかした?」


「圭吾さんはわたしが黙っていたら、どこまで世話を焼いてくれるのかなぁと思って」


「お望みなら、ご飯を全部食べさせてあげるけど?」


「わたしなら、そんなわずらわしい殿方は拾わないわね」

彩名さんが言った。


「志鶴は拾うんだよ」

圭吾さんが言い返した。

「拾ってくれるまで待つさ」

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