龍とわたしと裏庭で④【クリスマス編】
圭吾さんは背中からわたしをそっと抱きしめた。


「僕に触れられるのは嫌?」

「そうじゃないの」

「触れられる事自体が嫌なのか」


わたしはコクンとうなずいた。


「ねえ、もう少しだけ我慢してくれないか?」

「もう少し?」

「ほんのちょっとだけでいい。このまま君に触れるのを我慢してくれないか? ――僕のために」


圭吾さんのために?

いつも、わたしを待っていてくれる大好きな人のために?


「分かった」


言ってしまった。


圭吾さんはわたしを後ろから抱きしめたまま、体に触れた。

馴染みのない感覚を我慢しているうちに、体の中がフワッと持ち上がって、わたしの目の前が真っ白になった。

圭吾さんがフウッと吐息をもらす。


ああ、そうか

わたしの心、今、圭吾さんの中に流れ込んでる

圭吾さんが欲しかったのはこれなんだ


「病み付きになりそうだ」

圭吾さんが独り言のようにつぶやいた。

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