龍とわたしと裏庭で④【クリスマス編】

生まれて初めて触ったウサギは、フワフワして、暖かくて、モゾモゾしてた。


「かわいい! 圭吾さん、すっごいフワフワなの!」

「毛皮だからね」

「もう! そういう言い方しないでよ」


ウサギは鼻をヒクヒクと動かしている。


圭吾さんにねだれば、すぐに買ってもらえるのは分かっている。

でも、ペットを飼う気にはなれない。

いつかは死んでしまうものに愛情を注ぐのはつらいから。

裏庭の龍たちは、餌付けをして馴らしてはいるけれど、基本的には野生だ。それに寿命も長い。


わたしはもう一度ウサギを撫でると、柵の中に戻した。


圭吾さんは何も言わない。


ただ、代わりだとでも言うように、ぬいぐるみを買ってくれた。


茶色の垂れ耳ウサギ


「ラッピングしないで、首にリボンをつけてくれ。水色のがいいな」


首輪のように水色のリボンをつけたウサギのぬいぐるみが、わたしの腕の中に落ちてきた。


「ありがとう」


わたしは圭吾さんの腕にしがみつくようにして言った。

< 64 / 120 >

この作品をシェア

pagetop