龍とわたしと裏庭で④【クリスマス編】
「気が進まないがね」

圭吾さんは顔をしかめた。


「ああ。だが必要だろ? 圭吾だって、線を引いたじゃないか。侵入する事を考えてたんじゃないのか?」

「考えたよ。最終的には僕が決定を下さなければならない事も分かっている」


圭吾さんは何かを迷っている。


部屋の外から声がした。

襖(ふすま)を開けて、住み込みのお手伝いさんが顔を出した。

わたしが配膳のお手伝いをしようとすると、圭吾さんまで立ち上がりかけた。


「圭吾さんは座っていて」

わたしは思わずきつく言った。

「これくらいできる」


巧さんが『ふうん』って言った。

「お姫様と思いきや、意外に手際いいね」


「志鶴はたいていのことは一人でこなすよ」

圭吾さんはそう言った。


でも何だかとても嫌そう。


「『幼い』なんて言って、本当は圭吾が幼いままにしておきたいんじゃないのか?」


「痛いところ突くなよ」

圭吾さんが苦笑いを浮かべた。

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