龍とわたしと裏庭で④【クリスマス編】
和子さんはうなずくと、戸棚からコーヒーカップを出した。


「あ、インスタントでいいよ」


悟くんがそう言うと、和子さんはジロッと悟くんを見た。


「当家にはインスタントなどありません」


本当の事を言うと、彩名さんのアトリエと圭吾さんの部屋にはインスタントコーヒーがあるけど。


「和子ばあちゃん、寝たら?」

悟くんが陽気に言った。

「時間も遅いしさ、後は僕らがやるし」


「まだ、そこまでは老いぼれてはおりませんよ」

和子さんはピシャリと言った。

それから意外にも、ふふふっと笑った。

「相変わらずどうしようもない方ですね、悟様」


「でしょう?」

悟くんはニヤリと笑うと、真っすぐ戸棚まで行ってごそごそと中を探った。

「ほら、見ーっけ!」


悟くんの手にはインスタントコーヒーの瓶。


「えっ? どうして分かったの?」

わたしは驚いて尋ねた。

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