愛のない世界なんてない

「…嘘…」

「本当」
裕次は今にも泣きそうな目だった。

「よかったじゃない。今日家に誘ってあげなよ」
私は自分の家じゃないのにそんなことを言った。

「…おう」

「お礼は?」

「…なんでお礼なんか…」

裕次は少し照れる。

「じゃあ嘘のこと咲ちゃんに言っちゃおうかなぁ」

「……ありがと………」

俯いたままだった。
「目合わせなさいよ。でないと…」

「分かったから…っ」
状況が分かったのか私の目を見る。

裕次の顔が真っ赤だ。

「………ありがと」

もう耳まで赤くしちゃって赤面だ。
天狗じゃん。

「顔真っ赤」

「…」

また俯く裕次。

意外と照れ屋で恥ずかしがり屋の裕次と知った。

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