愛のない世界なんてない
「咲…」
「やめて、もう名前なんか…呼ばないでよ…浮気者…毎日他の女子に追いかけられても…困ってないじゃん…女たらし」
「好きなのは咲だけだよ」
「もう…戻る」
咲は裕次に背を向けた。
「待て」
咲の細い腕を裕次は掴む。
「もう嘘だと思ってれば…いいだろ……?咲は何も…」
そのとき裕次から涙が溢れた。
「………裕次?」
思わず振り返った。
…泣いてる。
「なんで…泣くの?」
「お前が好きだから」
「そんなので泣くの?」
「………」
「バカ」
咲はそう言ったらハンカチで裕次の涙を拭いた。
「もう信じてあげるから…だからもう泣かないでよ」
咲はそう言うとゆっくり微笑んだ。