愛のない世界なんてない
なんでこんな変わったのよ…。
てか、自分が万引きの確信犯って忘れてたよ!
「あぁ、うちの十年後って………」
「十年後?」
また宮迫は私の話を聞いてたのかよ。
「なんでもないわ」
私はそうかわした。
そして高校の体育館に入った。
あー、懐かしい…この体育館のツーンとした渋い匂い。
マットの香りや跳び箱の香りがうようよと私の鼻に運んで懐かしさを呼んでくる。
「華芽ぇ!」
この懐かしい声は?
「愛(チカ)!?」
この声、この目がパッチリとした高校で美人で有名な愛は変わりない。
「華芽、遅かったね」
「あはは、うん…」
私は笑って誤魔化した。
寝坊したなんて言ったらバカにされちゃう…。
「華芽っ」
また懐かしい声が私を呼ぶ。
「笑子(エミコ)?」
「そうよお、久しぶりねぇ」
やっぱり笑子だった。
笑子はクラスでも1、2を争うくらい明るい性格の持ち主だった。
「笑子ったら変わってない~!」
「でしょー!?」
思わず高校生気分。
すると笑子の右手の横にまだ三歳くらいの男の子がいた。
「笑子、その子誰?」
私は指を差して聞いた。
「この子?子供よ~っ♪」
笑子は頬を赤くしながらその男の子を抱っこした。
もう……そんな段階まで……。
「夫誰?」
「医者の人なの!小児科の。私より五歳年上よ~っ♪」
笑子は嬉しそうに語った。
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