愛のない世界なんてない
ガチャッ…。
また誰か入ってきた。
髪が短く、大人っぽい顔をした人。
「……………」
萌ちゃんは固まった。
一瞬にして。
「あんたも家出………なんかしないわよね?」
「し………しないよ………」
「あ、優ちゃん」
もしや………
「これぞ藤本家の美人三姉妹」
予想は当たった。
「咲は家出してる暇、ないから。ちょっと咲連れてきて」
アイコンタクトで圭が私を見た。
私が行けって事か。
「呼んでくる」
私は行ってきた。
裕次の部屋の前に来てドアを開ける。
「咲ちゃ…………」
咲ちゃんは裕次と一緒に寝ていた。
「あーぁ………無理っぽ……」
「咲いる?」
年上に向かってタメ口とは。
「こんなか………」
そう言うと優という子は部屋に入った。
鬼のようだ。
家族の中で一番怖そうなそんなイメージを持ってしまった。
優ちゃんは咲ちゃんと裕次の姿を見て呆れていた。
その顔はとっても。
それは理由が分かってしまったのだろう。
「咲ぃぃぃぃぃぃ!!」
鬼のような響く声が耳の中にキィィィンッと入った。
「……………………ん?」
むにゃむにゃと眠そうに起きた咲ちゃん。