愛のない世界なんてない

｢一旦家に戻るか!｣
私も咄嗟に走った。
人混みを避けながらずっと無意識に走る。
ここから…。
あのコンビニがあったからもうすぐ着くはず。
ひたすら走って走って。
久しぶりの家を見る。
するとポンッと軽く肩を叩かれた。
｢ヤッホー華芽さん♪｣
後ろにいたのはあの磯部雛。
昨日の朝に来た二歳年下のお肌ピチピチ新婚野郎子持ち(二歳)野郎だ。
｢雛ちゃんじゃない｣
｢そうっすよ～!｣
相変わらず金髪っぽい二つ結びを揺らし下の髪の毛を少し出す。
あー、なんかコイツ見てるうちにデスノートのミサミサに見えてくる。
｢昨日コンビニにいなかったですよねー?｣
｢うん、昨日はおでん屋に行ったのよ｣
｢もぉしかして、食い逃げ!?｣
｢あー……どうだろう…｣
今振り替えれば金払ってない。
払う前に私は酔っぱらって圭の家に行ったから……。
払ってない!
｢ど、同期に払わせた!｣
ちょっと半分嘘。
｢早く貯金おろせばどうですかぁ?｣
｢しないしない｣
私はフンッとした。
すると雛は言った。
｢私の家に来ますか?私暇なんですよ～｣
と言って少し腕を引っ張られた。
｢ちょ…、行くよ。だから手放して｣
そう言うと雛は黙って手を放した。