愛のない世界なんてない
「咲」
「何…」
咲が暗い。
「元気ないじゃん…」
「祐次だって…」
「……………」
祐次は何も言わなくなった。
二人は沈黙の中、歩いていた。
何も話すことがなくて、何もなくて。
「…いつも誰とお弁当食べてるの…?」
沈黙を破ったのは咲だ。
「…………………」
祐次は何も言わない。
そこでやはり咲は何かを察知しただろう。
「なんで…冷たいの……」
「………………」
また祐次は何も言わず、口を開かない。
「…………」
咲は涙を流した。
そこで咲が言った。
「“最低”」
咲はそう言って先に学校に行ってしまった。