潮騒
あたしの問いに、彼は舌打ちを混じらせながらも、



「俺はただの情報屋だ。」


「…情報屋?」


「クライアントから依頼を受けて、調べた情報を渡す。」


「………」


「まぁ、平たく言えば、探偵みてぇなもんだけどな。
頼まれりゃあ、それこそほくろの数まで数えるぜ。」


それにしては、随分と物騒なものを持っているじゃない。


探偵みたいなものだなんて彼は言っているけれど、でもどれほど黒い色に染まっているかくらいは見抜けてしまう。



「もう質問タイムは終わりで良いだろ?」


言って、眉間にさらに強く押し付けられた、金属塊。


あたしは目を逸らした。



「多分、北浜社長の娘さんの誕生日とか、そういうのだと思うよ。」


「北浜に娘なんていねぇはずだ。」


「15年前に愛人に産ませた子供で、認知もしてないし、今は関西に住んでるらしいけど、息子達なんかよりずっと可愛がってるって、社長が前に言ってたの。」


「………」


「あたしにだけ話してくれたことだし、今まで一切他言したことなんてなかった、って。」


あたしの言葉に、彼は考え込むように銃を降ろした。


これで満足なのだろうか。



「ねぇ、北浜社長はどうなるの?」

< 10 / 409 >

この作品をシェア

pagetop