潮騒
「だってこんなルカと仲良くしてるなんて、絶対悪い子だとは思えないじゃん?」


それって嫌味かよ。


なんてこと、もう面倒なので突っ込まない。


レンはご機嫌そうな様子で煙草を咥え、まるでこの前のことさえ嘘のよう。


けれど美雪は少し泣きそうな顔して、助けてください、と目だけで訴えかけてくる。



「まぁ、友達になるくらいなら、害はない男だけど。」


「てめぇ、こら。」


「だってあたし、レンの褒めるポイント知らないしー。」


「顔とか、性格の良さとか、脱いだらすげぇとか、色々あんだろ!」


「それただの自意識過剰って言うんだよ。」


言い争うあたし達を見て、彼女はさすがにぷっと噴き出した。



「何かルカさん、いつもと全然違うんだから。
それに面白いし、すっごい意外な一面を見たっていうか。」


今まで必死そうだったレンは、笑った美雪を見て口元を緩めた。


仕事なんかじゃほとんど見せない、優しい顔。



「あたし、美雪です。」


美雪はそう言いつつ、ちゃっかり自分の名刺を渡していた。


そういうところは抜かりがないらしいが。


でもレンはそれを受け取るだけで、自らの名刺を出すことはなく、



「じゃああとでメールするね!」


と、嬉しそうに首を傾ける。


あたしはふたりのやりとりを、半ば呆れ気味で見守ることしか出来なかった。

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