潮騒
それからすぐに、美雪は誰かに電話で呼び出されたようで、行ってしまった。


レンは相変わらずのにんまり顔だ。



「ちょっと、アンタ鼻の下が伸びてて気持ち悪いんだけどー。」


「そんな顔も格好良いっしょ?」


「どこがよ、馬鹿丸出しじゃない。」


けれど、ふふふん、なんて鼻歌混じりの彼は、貰った名刺を顔の前でひらひらとさせ、



「美雪ちゃんの番号ゲットしちゃったー。」


なんて自慢げに言ってくる。


確かに思い返せば、レンのタイプはああいう感じだけど。


常に笑顔で、そこにいるだけで周りまで元気にしちゃうような、性格からして可愛い感じの子。


けど、でも、何か納得出来ないあたし。



「ねぇ、本気なの?」


「何が?」


「本気で美雪に惚れたのか、って聞いてんのよ。」


レンが本気で恋をしたというのなら、相手が誰であろうとあたしは応援するつもりだ。


けど、宮城くんのことを抱えている彼じゃ、他人を幸せになんて出来るはずがない。


色マクラやってる人間が本気になったところで、互いに傷つくだけなのだから。


だから半端な恋愛になるならば、最初からしない方が身のためだ。



「本気とか、本気じゃないとか、俺もうよくわかんねぇの。
でもあの子と仲良くなりたいな、って思ったのは、正直な気持ち。」


苦笑い混じりに、レンは言う。



「ルカもたまにはそんなんくらいあるっしょ?」

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