潮騒
「どうしてこんなに気持ちの悪い瞳の色をしているのかしら。」


「チェンは忌み子よ。」


「双子なのに、どうして?」


祖母らしき人は、来る度にそう吐き捨てる。


両方の目の色が違うから、ヨンハみたいじゃないから、だからここに閉じ込められているのだということは、わかってる。


今になって思えば、生まれた瞬間にでも川に投げ捨てて殺してくれれば良かったのに。


なのに隔離されていた。



「あなたは一生ここから出る必要なんかないわ。」


小さな小さな小窓から切り取られた、青い空。


ただ眩しくて、目もくらむほどに欲しいのに、それには決して手が届くことはない。


だからいつも求めてた。



「いっそ病気にでもなって死んでくれたら、余分な食事を作る手間が省けるのに。」


蔵には大きなナタがあった。


それは常に鈍色に研ぎ澄まされていて、刃こぼれひとつしていない。


きっと無言のプレッシャーだったんだと思う。


自分達の手は汚したくないから、だから自殺を願われていたんだと思う。



「良い?
ヨンハとは口をきかないでちょうだいね。」


「………」


「あなたは人間なんかじゃないんだから。」





あぁ、神様

生まれてきてごめんなさい。





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